フリーライターAさんの裁判を支援する会

すべてのハラスメントにNO!性暴力と嫌がらせ、報酬不払いを許さない! 勇気をもって声をあげたAさんの裁判を支援する会です。出版ネッツのメンバーが運営しています。

証人尋問傍聴記(第2回)セクハラを受ける〜専任のウェブ担当として業務委託契約へ

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 2021年11月17日、10回目の裁判期日を迎えたこの日、原告と被告の尋問が行われた。わずか7か月の間に何が起こったのか。Aさんと被告の証言をもとに、ライターの松本浩美さんが概略を描いた。

〇セクハラを受ける
 記事執筆後もAさんは、被告から施術を受けた。合計6回、すべて無料だった。しかし、施術はAさんが望んだわけではない。「一度受けると被告から『次の日程は?』と聞かれたので、通ってしまいました」。
 6回目となった6月3日、セクハラを受けた。知り合ってから約3か月が経とうとする頃だった。
 大きな声で抵抗したAさんに被告は言い放った。「こういうことをみんなにしていると思っているだろうが(違う)、あなただからするんだ」。
 帰宅後、Aさんはみぞおちが苦しくなり、吐き気に襲われた。

 

〇アメとムチで「洗脳状態」に
 施術中にセクハラを受けたことから、Aさんは被告に「打ち合わせのときは施術はなしで」と提案した。しかし、被告との縁を切ったわけではない。なぜ、通ってしまったのか。Aさんはその理由を、被告による「アメとムチ」と証言した。
 「被告は私のキャリアについて話をしてきました。こういうことを(エステ、美容について)無料で教わることができるのはすごいことだよ、と言いました」。
 その後、被告によるセクハラ行為はエスカレートしていった。そして、「女性がフリーランスとして生きていくためには、こういうセクハラもかわさないとダメだよ」などと、心構えを説いたりした。
 なぜ、やめられなかったのか。当時の心境をこう振り返る。
 「洗脳状態(にあった)。(やめてとは)言えませんでした。被告の機嫌を損ねるのが怖かったのです」。「被告は話が巧みというか、性的な話をする一方で仕事の話もしてきました。ここに来ることで、自分は成長できるのではないかと思いました」。

 

〇専任のウェブ担当として業務委託契約
 もう一つ縁を切れない理由は、被告との間の業務委託契約であった。
 「ライターとして独立してやっていきたかった。実績をつくるチャンスと思いました」。
 6月4日、被告からAさんに具体的な業務内容と報酬額を書いたメッセージが送られてきた。セクハラを受けた翌日のことだった。
 内容は次の通り。基本報酬は月15万円(税込)。業務内容は、被告サロンの公式サイトを検索結果に上位表示させ、集客、商品購入などを増やすために実施する「SEO対策」である。被告が求めているのは、顧客層である40〜50代の女性が興味関心を抱くテーマ、あるいはキーワードを検索したときに、サロンのサイトが目に付くような記事。Aさんはこの年代の女性たちが抱える悩み(美容、健康、ライフスタイルなど)の改善にサロンが役立つような記事を書く。
 なお、メッセージには「6か月間様子を見させてもらって」「7か月目から基本給30万円以上になっているように結果を残していただけるとうれしいです」ともあった。
 それをもとにAさんは契約書を作成、同月30日被告にLINEで送ると、「1か月様子を見て、本契約を締結したい」という返事があった。「様子を見」る期間が変更になっていた。
翌日7月1日、被告と面談すると、「1か月は試用期間だから、ハンコは押さない」と言われた。
ここまでの被告とのやり取りでAさんは業務委託内容を次のように理解した。月額報酬15万円(税込。交通費は自己負担)。仕事の開始は8月1日から。1か月は試用期間で、8月末日までに本契約を締結する。ただし、もし、8月以後、Aさんが被告サロン以外の仕事をするときは契約を見送る。
 Aさんにとって専任の話は魅力的だった。そこで仕事に専念するため、掛け持ちしていたアルバイトは7月末でやめることにした。しかし、それまで得ていた月収は19万円であり、サロンの仕事15万円だけでは足りない。そこで、フリーランスとして続けていた仕事だけは続けさせてほしいと被告に頼んだところ、「がんばろう」と一言。Aさんは了解を得たと解釈した。

松本浩美(出版ネッツ

 

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証人尋問傍聴記(第1回)被告から「ビジネスパートナーになってほしい」と言われ

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 2021年11月17日、10回目の裁判期日を迎えたこの日、原告と被告の尋問が行われた。傍聴席は26席であったが、出版ネッツ出版労連等から46人が集まり、入れ替えて傍聴した。
 私(松本浩美)は、初めてAさんの裁判を傍聴した。証言の最中は一言も聞き漏らすまいと、メモを取るのに夢中であったが、翌日メモに目を通すと、みみずがのたくったような字で書いた一言一言が胸に迫ってきて、通常の神経ではいられなくなってしまった。

 わずか7か月の間に何が起こったのか。Aさんの主尋問での証言をもとに概略を描いたものを、これから10回にわたって連載する。なお、発言はあくまでも私の手書きによるメモであり、裁判記録ではない。趣旨はくみ取ったつもりだが、一言一句正確ではないことをお断りしておく。

■原告Aさん
 13時30分、尋問開始。担当は長谷川悠美弁護士だ。被告との出会いからをAさんに尋ねる。Aさんはかぼそい声ながら、しっかりとした口調で答えていく。

〇被告から「ビジネスパートナーになってほしい」と言われる
 きっかけは、2019年3月9日、被告がAさんに記事の執筆を依頼するメールを送ったことだった。当時Aさんはフリーライターとして自身のホームページを開設していた。被告のサロンで施術を受けて、体験談をAさんのホームページに掲載してほしいという依頼内容だった。メールには仕事として受けてほしいこと、原稿料はいくらかと書かれていた。
 同月20日、被告のサロンで初めて会う。このとき被告はAさんに「ビジネスパートナーになってほしい」と言った。また、Aさんが他社のエステサロンで体験したことがあると伝えると、「比較記事にしてほしい」とも言った。
 その一方で被告は、Aさんに性体験について尋ねてきた。理由を問うと、「エステのカウンセリングでは客とこういう話もする」、さらに「男性エステティシャンは女性の体に触れるので、いろんなことに気を遣っている」と答えた。
 そして、1回目の施術。このとき被告から、「バストを見せてほしい」と言われた。理由はAさんが施術中にくすぐったいと感じて抵抗しているようなので、「一度裸になると受けやすくなる」からだという(思い切って裸になれば開放的な気分になる、という意味か?)。しかし、Aさんは断った。
 2回目の施術のとき、被告から施術前後の比較写真を撮ろうと提案され、下着をずらすように指示された。Aさんは涙声で証言する。
 「今となっては、エステ写真なのに(下着をずらして撮影するなんて)おかしいと思います。でも、当時は信用していたので応じてしまいました」。
 なお、写真撮影は施術による体形変化を示すことが目的なのに、体重等は計測していない。肝心のエステ内容の説明書も渡されず、施術後の写真も撮影されなかった。

 体験記事を送ると、被告からLINEでAさんの仕事を高く評価するメッセージが多数送られてきた。「読みやすい」「文章表現がわかりやすい」「この仕事向いてますね」「能力高いですね。20代半ばとは思えない」などなど。Aさんがホームページに体験記事をアップすると、被告からは「(記事を)活用させていただきます!」とのメッセージが届いた。
 4月28日に被告から、サロンの公式サイトに掲載する記事の制作を専任でやってほしいというメッセージが送られてきた。
 Aさんは被告の役に立ってうれしいと感じた。しかし、その一方で被告は肝心の報酬の話をしてこなかったため、不安になった。Aさんは報酬について確認するため、被告に「減額しても問題ない」とメッセージを送ったが、被告からの反応はなかった。

松本浩美(出版ネッツ

 

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withyou-nets.hatenablog.com

 

フリーライターAさんの証人尋問の記事が掲載されました【メディア掲載】

Aさんの裁判について、11月17日に行われた証人尋問に傍聴に来ていただいた小川たまかさんの記事が、ヤフーニュースにUPされました。

news.yahoo.co.jp

「原告の女性Aさんは性的な要求や性加害が繰り返し行われたことや、当初の約束通り報酬が支払われなかったことを改めて訴えたが、被告の男性H氏は訴えの内容をほぼすべて否定した。」
という内容を要点をまとめてレポートされています。

また、小川さんは個人的な感想として、「原告のH氏は、傍聴席から見て誠実に答えている印象は持てなかった」と書かれています。

(事務局)

 

 

小川たまかさんの関連記事

news.yahoo.co.jp

11月17日、証人尋問が行われました

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11月17日、東京地裁にてAさんの証人尋問が行われました。

46人の方が傍聴に駆けつけてくださいました。

御礼申し上げます。

傍聴席には26人しか入れず、途中で入れ替えをするという状況でした。

 

証人尋問は、13時15分から17時までの予定だったのですが、18時半までと1時間半も延びてしまいました。

原告への尋問時間が大幅に延び、Aさんは本当に大変だったと思います。

つらい出来事の詳細を話さなければならず、時に涙を流し言葉に詰まりながらも、最後まで事実とそのときに感じた気持ちを証言されました。

心より敬意を表します。お疲れさまでした。

 

詳しい報告は、追ってこちらのブログに掲載します。

この後、最終準備書面を提出、2月に最終の口頭弁論が開かれ、春ごろには判決が出るという流れです。
(事務局)

第9回口頭弁論傍聴記

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※写真はイメージです


 10月6日、フリーライターAさんが起こした裁判の第9回口頭弁論が開かれました。

前回の口頭弁論で被告側から陳述書と証人申請が提出されなかったため(代わりに出された上申書には、①9月22日に証拠申出を行わないこと、②原告・被告間の遮蔽措置に反対すること、③被告・傍聴席間の遮蔽措置は希望することが記されていました)急きょ設定されたもので、出版ネッツからAさんを含め7名、全体で16名の傍聴支援がありました。


 当日は被告本人の他、Aさんと一緒に食事等をした女性の陳述書も提出されました。ただし申請した証人は被告のみ。そのため裁判官から、証人として採用するのは原告と被告のみとの判断が下されました(原告側はAさん本人のほか、最初にAさんから相談を受けた杉村和美さんの証人申請もしていました)。
 結果、11月に東京地裁で行われる証人尋問の持ち時間は、原告が主尋問(原告側代理人が原告に対して行うもの)が55分で反対尋問(被告側代理人が原告に対して行うもの)も55分、被告が主尋問(被告側代理人が被告に対して行うもの)45分で反対尋問(原告側代理人が被告に対して行うもの)が55分となりました。


 なお原告・被告間の遮蔽措置に関しては、裁判長から具体案の提示を求められていたことから認められるはずです(被告・傍聴席間の遮蔽措置は「裁判は公開で行う」との原則から外れるため、おそらく認められません)。


 裁判も山場ということで、証人尋問ではいつもより大きな法廷が用意されます。多くのみなさんが傍聴により、Aさんを支援することを望みます。

(澤田裕/編集)

 

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第8回口頭弁論を傍聴して

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9月22日10時からの第8回口頭弁論を傍聴してきました。

今回が最後の口頭弁論で、次回は証人尋問だと聞いていたのですが、被告側からは本日〆切であるはずの人証申請も陳述書も提出されず、もう一度弁論期日を入れてほしいと希望してきました。

原告側弁護士が立ち上がって抗議し、「人証申請が期日までにないということは証人の希望なしと見做すべきではないか、裁判をいたずらに引き延ばさないでほしい」と反論しましたが、裁判官が被告の尋問が必要だと考えているとのことで、結局10月にもう一度口頭弁論が入ることになりました。

 

本来であれば、原告と被告が一斉に陳述書を提出するはずだったのが、被告が提出しなかったことによって、原告側の最終の陳述書を見てから被告側の陳述書が提出されるということになります。それでは不公平が生じるのではないか?という感想を持ちました。

 

証人尋問にあたっては、性暴力という事件の性格上、被告と原告の間に遮蔽物を入れてAさんが被告の顔を見ないですむようにする配慮を求めていますが、驚いたことに、被告側からも傍聴席との間に衝立を立ててほしいという要望が出てきたそうです。理由は、傍聴席から見られることによって被告が緊張するからだとのこと。

被告の遮蔽の前例は聞いたことがなく、裁判の公開性という観点から考えても、被告の希望が通るとは考え難いが、裁判官が遮蔽のイメージを双方に提出するように要請してきたので、検討するつもりなのかもしれない、と弁護士も首を捻っていました。

 

傍聴者は19名でした。

証人尋問は、11月に行われます。

この裁判の大きな山場となり、広めの法廷を確保してもらっておりますので、一人でも多くの傍聴をお待ちしております。

証人尋問の場で性暴力の加害者と対峙しなくてはいけないAさんの不安を思うと胸が痛みますが、傍聴席をたくさんの支援者で埋め尽くして、Aさんを支えましょう!

勇気をもって声を上げたAさんをご支援くださいますよう、よろしくお願いいたします。

 

Kみすず(支援する会世話人

 

 

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心強い応援メッセージをいただきました

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「Aさんの裁判を支援する会」の会員の方から、

心強い応援メッセージをいただきました。

ありがとうございます。

 

●Aさんの裁判の話を初めて聞いたとき、なぜ、私たち女は、繰り返し繰り返し、痛めつけられなければならないのか、と胸が苦しくなりました。

でも、そんな弱音を吐く暇はない。

絶対に許さない! 

Aさんの尊厳、私たち女の尊厳を守りぬく闘いとして、ともに闘っていこうと思う。

豊 楊子さん(桐原ユニオン)

 

●Aさんの裁判は争う価値があるものだが、当該の気持ちになればなんと残酷な事件かと思わずにはいられない。

このような事件は二度と起きてほしくない。

しかし起きてしまったからには、法廷の場を土俵にして勝たないわけにはいかない。

当該に寄り添う心こそ、何よりもこの裁判には必要なのではないか。

私が所属する日本音楽家ユニオンでは、新国立劇場での合唱団員の不当解雇事件が記憶に新しい。

この争議は音楽ユニオンが原告になった。

しかし当該は女性一人だ。

精神的なつらさは計り知れないものがあっただろう。

その後も音楽大学の女性講師の不当解雇事件があり、関西の短期大学では使用者が無期雇用転換を阻もうとする事件があった。

こちらも一人の女性が被害者だ。

女性が弱いとか男性の方が強いとか言っているのは時代錯誤かもしれない。

しかし性差による不利益だけでなく、有期雇用契約業務委託契約など契約自由の原則が残した負の遺産と対峙して戦うことは、我々プロレタリアートの宿命なのだろう。

互いに愛し合おうではないか。それがもたらすプラスの遺産は平和に他ならない。

高橋正樹さん(日本音楽家ユニオン

 

引き続き、支援の輪を広げていきたいと思います。

どうぞよろしくお願いします。

 

第7回口頭弁論を傍聴して

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 7月14日、フリーライターAさんの第7回口頭弁論が開かれ、24名の方が傍聴に来てくれました。

 実は、法廷に入るのは初めてです。女性裁判長、女性陪席裁判官(もう一人は男性)、そして女性司法研修生と、しかも若い方々なので、思わず「韓国ドラマ『リーガル・ハイ』みたい」と感心してしまいました。

 裁判長から、原告側・被告側双方に反論主張はほぼつきていることの確認が行われ、次回もう一度弁論を入れ、次々回(10月か11月)には証人尋問へと進むことになりました。裁判長は証人についても質問。こちら側は、原告本人と、最初からAさんに寄りそってきた出版ネッツ組合員を予定、被告側は、被告本人と、Aさんと面識のある女性も検討中と答えました。

 そして、誰を尋問するかという証人申請と、証人の陳述書を、9月15日までに準備することになりました。

 今回も、支援者は法廷には入りきらず、多勢が待機しました。次々回の証人尋問のときには、30人入れるほどの広い法廷を用意してほしいと要請しました。

 なお、被告が組合を敵視するようなブログを、この間ずっと書いていましたが、7月13日、突然すべて削除されたとの報告が、裁判終了後にありました。見るに耐えないものが消え去って、少しホッとしました。

 証人尋問のときには被告も出廷しますから、Aさんは不安なことと思います。遮蔽板を置くなどの配慮はしてもらえるそうですが、Aさんを励ますためにも、皆さん、傍聴に来てくださるようお願いいたします。

若藤えい子(支援する会世話人

 

 

事件の概要はこちら

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オンライン勉強会 変えたい!セクハラ・パワハラを生み出すわたしたちの社会

 

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 2021年6月16日、フリーライターAさんの裁判を支援する会と出版労連出版ネッツの主催のオンライン勉強会「セクハラ・パワハラ裁判と被害者心理」が開かれました。Aさんの裁判の弁護士のお2人と、ライター、ハラスメント実態調査に取り組んだ団体メンバー、支援者が話をされ、130名が視聴しました。報告と感想を記します。

 

はじめに裁判の担当弁護士・長谷川悠美さんから裁判の概要、ついで弁護士の青龍美和子さんからセクハラ・パワハラ事件についての話がありました。地位・関係性を利用した性暴力発生のプロセスと、抵抗できない被害者心理の背景、ジェンダーギャップ指数が世界153か国中120位(2021年)という男尊女卑社会の日本で、そうした被害者心理が理解されにくい事情について説明されました。その後、フリーライターの小川たまかさんから「地位関係性の中で起こる性暴力」について、表現の現場調査団の田村かのこさんと木村奈緒さんからはハラスメント実態調査の概要(*)と事例紹介、そしてPraise the braveの八幡真弓さんから、「支援者から当事者となり見えてきたこと」という話題提供がありました。

 

表現の現場調査団の実態調査ではAさんの裁判に関連する事例が紹介され、アートや演劇、映画、音楽、文芸、アニメやゲームの業界ではフリーランスとして働く人が多く、法的保護が弱いために被害が放置されている現状が浮かび上がりました。八幡さんのお話からは、パワハラ・セクハラ被害後の回復の過程とは浮き沈みの大きい、一直線に進むようなものではないことが伝わってきました。そして、支援者側が陥りがちな思い込みや、当事者のどのような選択も尊重することの重要性を指摘されました。

 

今回、改めて感じたことは、わたしたちの社会に性暴力容認文化ともいうべきものが蔓延しているということです。被害を受けた側が立証しなければならない司法のあり方、仕事を得るには多少の「〜ハラ」は乗り越えて当然という「常識」、自分に落ち度があるのではと思ってしまう自責の念……。変えたいことばかりです。先日も立憲民主党の刑法改正ワーキングチームの会合で「50歳近くの私と14歳が同意の性交をして捕まるのはおかしい」というトンデモ発言をした政治家が批判を受け撤回・謝罪するという出来事がありましたが、“年齢差や立場を超えた純愛”というファンタジーが誰の側からのものであるかをよくよく考えてみる必要があると感じました。対等な関係や同意についても学びたいです。

 

勉強会の最後は、原告Aさんのあいさつでした。Aさんは、被害を受けた当初の心境、出版ネッツに相談・加入し、支援者や弁護士との関わりの中で意識が変わったこと、社会への怒りや失望、新しい仕事で出会う方たちの姿に触れて生じた前向きな思いを率直に話されました。Aさんの勇気と真摯さに打たれる一方で、年長者が支援するかたちにならざるを得ないなかで、Aさんに負荷がかかりすぎていないか気になります。つねに聴く耳をもち、疲れたら休んでいいことを確認し合いながらゆっくり進んでいきましょう。

(山家直子 出版ネッツ

 

(*)表現の現場ハラスメント白書2021について

www.hyogen-genba.com

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第6回口頭弁論を傍聴して

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5月19日、フリーライターAさんの第6回口頭弁論が開かれ、23名の方が傍聴に駆けつけてくれた。今回は原告側が準備書面4と書証を提出。準備書面は前回提出の積み残しで、症状の経過や、被告によるセクハラ・パワハラ行為と症状との因果関係についてである。

 

性暴力被害者の症状の表れ方はまちまちであり、被害に遭ったあとは「部屋に閉じこもり、仕事などできないはず」などと思い込むのは危険であること、記者会見に出席するなどの行動についても、「支援を受けることによって、被害者が被害を自覚し、受け入れていくプロセスが始まる」のであり、原告の症状や行動は性暴力被害者のたどるプロセスと一致すると述べた。また、被告は主張が場当たり的で、不合理に変わっていること、その場しのぎにすぎず信用性がないこと、それは訴訟の場においても同様であることなどを主張した。

 

前回、裁判官3名のうち1名が女性になったが、今回さらに裁判長が女性に変わり2名が女性となった。4月は異動があるとのことだが、この裁判の特性を考慮したものとも考えられる。ぜひ、女性の視点からの判断をしていただきたい。

 

次回は被告の反論の弁論となる。Aさんは、福祉関係のアルバイトを始めたことを報告するとともに、「準備書面を読んで、気持ちが晴れました。被告がどのような反論ができるのか、してくるのかと思います」とあいさつをされた。皆さんもぜひ裁判傍聴支援をお願いいたします。また、「フリーライターAさんの裁判を支援する会」への加入をお願いいたします。

(鈴木俊勝/支援する会世話人

 

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