「『表現の現場』ハラスメント白書2021」が公表されました
2021年3月24日、「『表現の現場』ハラスメント白書2021」が公表されました(*1)。
調査を行ったのは、アーティストや作家の有志により発足した「表現の現場調査団」(*2)。
写真、映像、芸術、文芸、報道、演劇、漫画、研究、デザイン、ゲーム、ダンス、古典芸能など、さまざまな「表現の現場」が自由で平等な場となるよう、調査と社会改善に取り組む団体です。
調査対象は、表現にかかわる活動・仕事をしている、学生等を含む人たちで、1,449人が回答しています。
このうち「(何らかの)ハラスメントを受けた経験がある」は1,195名にのぼり、「セクハラ経験がある」1,161名、「パワハラ経験がある」1,298名でした。
また、自由筆記の抜粋には、生々しいハラスメント事例が多数紹介されています。
この「白書」の特長は、集まった事例をもとに、さまざまな角度から分析を行っていることです。
事例は、「分野ごとに見る」「被害類型ごとに見る」「状況ごとに見る」「立場や属性から見たハラスメント被害」などにカテゴライズされ、各項目をさらに細かく分類のうえ、それぞれの特徴が示されています。
たとえば「文芸・ジャーナリズム」分野では、「契約・雇用の不透明さ」「取材相手からのハラスメント」「同業者間のマウンティング及びハラスメント」「編集者によるハラスメント」などに分類され、事例と分析が記載されています。
日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)フリーランス連絡会など3団体が行った「フリーランス・芸能関係者へのハラスメント実態調査」(*3)との共通点がみられるのは、表現の現場に、フリーランスで働いている人が多いからだといえるでしょう。
「白書」でも、「フリーランスに対するハラスメントに関する法的保護が薄いことにより、多くの被害が対処困難なまま放置されてしまっている」こと、契約書を作成しないために不当な値切り、超過労働などが蔓延し、さらには人脈やつながりを重視する業界の悪習慣がさまざまなハラスメントの温床にもなっていると指摘しています。
「表現の現場調査団」は、今後5年間、表現の場におけるハラスメントやジェンダーバランスの実態把握調査、フリーランスの表現者をハラスメントから守るための法改正要求などを行っていくことを目標に掲げています。
同じ目標を持つ者・団体として、今後連携してとりくみを進めていきたいと考えています。
(杉村和美/出版ネッツ)
(*1)「表現の現場」ハラスメント白書2021
(*2)表現の現場調査団
※「相談窓口」のページには、ユニオン出版ネットワーク(出版ネッツ)のリンクが張られています。
(*3)フリーランス・芸能関係者へのハラスメント実態調査