フリーライターAさんの裁判を支援する会

すべてのハラスメントにNO!性暴力と嫌がらせ、報酬不払いを許さない! 勇気をもって声をあげたAさんの裁判を支援する会です。出版ネッツのメンバーが運営しています。

フリーライターAさんの裁判 判決報告集会のお知らせ

フリーライターAさんのセクハラ・パワハラ・報酬不払い裁判

判決報告集会のお知らせ

 

1年半にわたって争われてきたAさんの裁判が、525日、判決を迎えます。

526日には、判決報告集会(オンライン)を開きますので、ぜひご参加ください。

 

判決の言い渡し

日時:2022525日(水)1310分~

場所:東京地方裁判所(※法廷番号はお問い合わせください)

 

判決報告集会

日時:2022526日(木)1830分~20

場所:Zoomhttps://bit.ly/3KlmANz

事前登録が必要です。

長谷川悠美弁護士・青龍美和子弁護士から判決内容に関する分析と今後の裁判に関する報告

上記に関する質疑応答

報告および発言

・枳穀智哉さん(出版労連 組織争議対策部部長)

・杉村和美さん(出版ネッツ 執行委員)

 ほか、各界のみなさん

原告Aさんのあいさつ

 

【問い合わせ先】a-shien@syuppan.netフリーライターAさんの裁判を支援する会)

 

(事務局)



 

皆様からいただいた署名を東京地方裁判所に届けました

フリーライターAさんが起こした裁判で「公正な判決を求める」オンライン署名をしてくださったみなさま、そのご協力に感謝申し上げます。

3月30日16時30分に、みなさまのお名前を一覧とした署名用紙(オンライン署名分623通、団体署名分163通)を東京地方裁判所の書記官室に届けました。対応された書記官の方は、「裁判官に届けます」と約束をしてくださいました。

 

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署名は引き続き募集し、4月中に第二次分として提出する予定ですので、お知り合いの方に呼びかけたり、SNSで拡散したりしていただけることを切に願います。

裁判の判決は、5月25日。東京地裁の裁判官が公正な判決を下すよう、共に声を上げていただきますよう、あともう少しよろしくお願いします。

 

フリーライターAさんに対する性暴力と嫌がらせ、報酬不払いを許さない!東京地裁に公正な判決を求めます!」

(事務局)

 

2022年4月28日 追記

皆さまにご賛同いただいた署名につきまして、上記の通り3月30日に第1次分を提出いたしましたが、それ以降にいただいた分を第2次分として4月27日東京地裁に提出しました。これまで署名してくださった皆さま、お知り合いにお声掛けくださった皆さま、SNS等で拡散してくださった皆さま、本当にありがとうございます。略儀ながらこの場でお礼を申し上げます。

(事務局)

性暴力と嫌がらせ、報酬不払いを許さない!オンライン署名にご協力をお願いします

性暴力・未払い裁判への裁判官の公正な判決を求める署名にご協力をお願いします!

 

フリーライターAさんが、報酬とハラスメントに対する慰謝料の支払いを求めて東京地方裁判所に起こした裁判は、10回の口頭弁論を重ねて2月16日に結審。5月25日に判決が下されます。
しかし、ハラスメントに関わる裁判の常として客観的な証拠は少なく、裁判所の判断がどうなるか予断を許しません。

そこで公正な判断を求めるため、このオンライン署名を立ち上げました。

chng.it

フリーライターAさんの裁判って、どんな事件?

withyou-nets.hatenablog.com

(事務局)

最終口頭弁論 傍聴記 Aさん、ここまで本当にお疲れさまでした

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 報酬不払いとセクハラ・パワハラの損害賠償を求める裁判が2022年2月16日、結審した。当日東京地裁には25人の支援者が集結したが、コロナ禍「第6波」の渦中であり、前回26席だった傍聴席は16席に減らされた。

13時10分、予定より5分ほど早く開廷。書証のやり取りの後、原告Aさんの希望により、最終意見陳述が行われた。

 一礼したAさんは立ったまままっすぐ正面を見つめ、メモを読み上げた。

被告は人生で大切なものを奪った。裁判の最中に体調を崩してしまったが、続けたのは新たな被害者を生まないため、他のフリーランスに対してこの事件を教訓にしてほしかったため。フリーランスは増加傾向にあるが、2022年4月施行のハラスメント防止法の適用対象外であり、大勢が搾取され傷ついている。性的行為を受け入れない報復として報酬不払いなどが行われているとし、公正な判決を求めた。

約5分間の陳述の間、裁判長と裁判官(左陪席)は書類を見ず、Aさんを見ていた。特に左陪席はうなずきながら訴えを聞いていた。

 

 閉廷後の集会では、まず長谷川悠美・青龍美和子両弁護士が結審にあたり、裁判官に理解を深めてもらうため、事件の概要と争点、事実経過と証拠等について網羅した最終準備書面を提出したことを報告。さらに、「陳述の最中、左陪席はAさんを見つめ、話を聞いていた。その勢いで判決を書いてほしい」と語った。

 なお、被告側も最終準備書面を提出したが、弁護団によれば従来の主張を繰り返すのみであったという。

 

 次に、山田一英氏(二玄社労組)、仁田裕子氏(女性ユニオン東京)、柚木康子氏(全労協女性委員会)、酒井かをり氏(出版労連中央執行委員長)、杉村和美氏(出版ネッツ)が激励の挨拶。

 そのうち2人のコメントを紹介する。

「セクハラは職場で日常的に行われているが、被害者はなかなか声をあげることができない。雇用されていても難しいのに、何の保証もないフリーランスであればなおさら訴えにくい。フリーランスのセクハラ・パワハラは労組ではなかなか取り組みにくいと思っていた。しかし、Aさんが声をあげ、皆さんがずっと応援してきたことは大きな力になる。Aさんに感謝している」(仁田氏)

フリーランスはハラスメント防止法の適用外だが、個人事業主のケガや事故について、使用者には安全配慮義務があるとする判決が出ている。今回はセクハラについて安全配慮義務違反を訴えた初の裁判。いい判決が出れば、たとえフリーランスが法の適用対象外であっても、対処してもらえるきっかけになる。フリーランスが安心して働ける環境づくりの一助になる」(杉村氏)

 

 最後にAさんは集まった支援者を前に、笑顔で感謝の言葉を述べた。

「次回は判決です。これで終わりになるのか、それとも裁判が続くのかわかりませんが、私としてはフリーランスの立場と権利を守るため、自分にできることをやっていくつもりです」。

 声にも明るさが感じられた。

判決は5月。ここまで本当にお疲れさまでした。判決まで時間がある。その間、支援者たちで署名活動を行う。あともう少し、がんばろうAさん!

松本浩美(出版ネッツ

最終口頭弁論でのAさんの言葉を紹介します

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2022年2月16日、東京地裁にて、フリーライターAさんの最終口頭弁論が行われました。

通常、口頭弁論では書面のやり取りがなされるだけですが、Aさんの希望もあって本人の口から、公正な判決を求める意見陳述が読み上げられました。

Aさんの言葉をそのまま紹介いたします。

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まず、現在の心境として、被告に対して反省してほしい、謝ってほしいという気持ちはありません。団体交渉の時までは、被告に自分がやったことを自覚してほしい、誠心誠意謝ってほしいという思いでいました。

しかし、被告の態度は一貫して不誠実で矛盾しており、ブログやメールでも、私や組合にまで事実ではない内容で攻撃を繰り返しました。私は、被告が自分のしたことを振り返ったり、反省して謝ったりする力がある人には思えません。 なので、反省や謝罪は求めることは不毛だと思っています。

それでも、被告がしたことは許されることではありません。被告は私から、健康な体と心、記事を書く楽しさ、美容に対する情熱、自分が稼いだお金で生活する当たり前の幸せなど、自分の人生で大切だったものをいくつも奪いました。被告のやったことは人間らしい生活を奪う行為であり、人権侵害そのものです。

簡単には断れない状況を作った上で性的な行為に及び、それでも私が完全に思い通りにならないとわかったら被告自身がコントロールできる「報酬を支払わない」という形で報復する。被告は無意識かもしれませんが、これが被告の行ったことです。DVの加害者は、自分の暴力などの責任が自分以外のところへ向くようにほとんど無意識に操作することが知られていますが、被告が今回の性的な行為やパワハラ、報酬未払いを合理化しようとし、その責任を私に向けようとしているのも、似た心理状態だと私は思います。

裁判をすると決めてからは 、嫌なことを思い出さなければならず体調を崩し、仕事ができない時期が長くありました。それでもここまで裁判を続けたのは、大きく2つの理由があります。

1つは、裁判を続けることが被告を含めた性犯罪・ハラスメントの加害者を少しでも抑制し新たな被害を生まないことに繋がると思うからです。私は被害に遭ってから何度か「死のう」と決心しましたが、運よく今まで生きています。しかし、今後、 同じような被害が繰り返され、その被害者が自殺するような最悪の事態は絶対に避けたいです。

2つ目は、世の中にいるフリーランスや被害者の方がこの事件を教訓として、被告のような加害者を避けたり、プライベートゾーンを同意なく触られたらその足で警察に行く、早い段階で誰かに相談するなど、後悔のない対処をしたりするきっかけにしてほしいと思うからです。

 

フリーランスの人口は増加傾向にあるにもかかわらず、2020年6月(中小企業は2022年4月)に施行されたハラスメント防止関連法では、フリーランスは適用の対象外です。

裁判官の皆様には、フリーランスが未だに充分には法的に守られていないために「フリーランスに対しては何をしても大丈夫だろう」と思っている人がいること、私も含めて、そんな人達に搾取され傷ついているフリーランスが大勢いること、立場が弱い人に対し、性的な行為を受け入れないことへの報復として報酬不払いなどの「経済的嫌がらせ」が行われる実態があることをご理解いただき、どうか公正な判決を書いていただきたいです。何卒、よろしくお願いいたします。

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なお、判決は、5月の予定です。
最後までのご支援、よろしくお願いします。

(事務局)

性や男女平等に関わる教育の後退が事件の背景に

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2021年12月に開催された「Aさんを支える会 総会」での広報チームメンバーの発言を紹介します。
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 Aさんを支える会の広報チームは2020年9月に発足し、Aさんの裁判の支援の輪を広げるため、13人のメンバーで、このブログやTwitterFacebookに裁判の傍聴記や学習会の報告などを掲載し、発信をしてきました。

 さて、今夜はAさんに2つのことをお伝えしようと思います。
 1つは、あなたは立派に闘っているということです。裁判を起こすと決めてから今日まで、きっと多くの葛藤や苦しみがあったことと思います。でも、先日の証人尋問の際のあなたは、つらい質問にも真摯に答えていました。
 訴えられた内容を被告がことごとく否定し、投げかけられた質問にまともに答えないばかりか、曖昧で矛盾だらけの言葉しか発しない時も、あなたは凛としてまっすぐ前を見つめていました。その姿に心から敬意を覚えました。裁判はまだ終わったわけではないけれど、今はとにかく心と体を休めてください。

 もう1つは使い古された表現ではありますが、セクハラは決してあなたのせいではないということです。2020年8月26日、マスコミ向けのレクチャーの際に、あなたは自身が被った性被害について、「私に知識がなかったから、何をされてるのかよくわからなかった」という趣旨のことを話されました。この言葉を聞いて、教育関係の編集の仕事をしてきた私は、「自分はこれまでいったい何をしてきたのだろう」と深く恥じ入り、責任を感じました。
 というのもあなたが性や体について、つまり人権や尊厳について知識がなかったのだとしたら、それはこの国の性教育がとても貧しいからなのです。
 実は1990年代、小中高では性教育を豊かにしていこうという機運が生まれ、たくさんの出版物が作られ、教育実践も盛んでした。しかし、90年代末から2000年代前半にかけ、性教育やさまざまな男女平等に関わる運動は激しいバッシングにさらされました。あなたが小学校高学年から中学生であった頃は学校現場が萎縮し、家庭でも「性」を学ぶ機会は余りなかったのではないかと想像します。
 その一方で、主として若い女性や幼い女の子の性を消費する文化、女性を社会経済的に対等に扱わない文化は、この社会に、インターネット上に、路上やマスメディアや出版物の中にも蔓延しています。人の尊厳を踏みにじるセクハラがいまだに起こっていることを、私たちはもっと恥じ、怒り、変えていかなくてはいけないと改めて思います。
 
 つらい思いを超えて、「もうこんなことが起こらないように」と裁判に踏み切ったAさん、広報チームの一員として関わらせていただいて、ありがとうとお伝えしたいと思います。
この社会を少しでもよくしていくため、これからも一緒に歩んでいきましょう。

山家直子(出版ネッツ
 

 

裁判官の皆さんへ 〜もうひとつの証言

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2021年11月に行われた証人尋問を傍聴していた人が、自身の体験を書いて送ってくれました。

誰にも話せないことがある――それはなぜなのか。

裁判官たちにぜひ読んでほしい、もう一つの証言です。

 

ーーーーーーー

 

昨年11月のAさんの証人尋問をつぶさに聞いて、ずっと考えていたことがあります。

 

Aさんへの反対尋問の「(被害と言いながら)被告に迎合するようなメールを送っているが」という問い。

そして裁判官からの補充尋問の「あなたはちっとも悪くないのに、被害を家族に言えなかったのはどうしてか」という問い。

 

その問いに答える前に、ひとつ、私の体験を聞いてください。

 

 

あれは私が小学校低学年だったときのこと。

 

うちは母子家庭で母は働きに出ていたので、私は自分で玄関の鍵を開けるいわゆる鍵っ子でした。きょうだいもなく、学校が終われば母が帰宅するまでは一人で留守番です。

 

その日、いつものように学校から一人で歩いて帰り、アパート敷地の門を閉め、1階の自宅のドアの前に立ったとき、後ろから誰かが門を開けて入ってきました。

 

振り返ると見知らぬ男の人です。おじさんというほどの年でもないけれど学生でもない感じ。

その人は少しほほえみながら「一人?」とか「今帰り?」などと話しかけてきました。

まっすぐこちらに近づいてくるのでうちに用事がある人かと思いつつも、家に誰もいなくて私が鍵を持っていることを知られたらどうしようと緊張しながら受け答えしていました。

 

けれどそのうち、「お小遣いあげようか」とか「お菓子を買ってあげる」「動物園に連れて行ってあげる」などと言い出したので、ものすごくびっくりしました。

だって、普段から母に、人さらいのような悪い人はこう言って近づいてくるから決してついて行ってはいけないよと言われていた、その通りのセリフだったからです。

 

「ああ、これがお母さんが言ってた人さらいって人かぁ」

なんてばかな人だろうと思いながらも、私はすべての誘いを丁寧に断りました。

 

するとその人は今度は「ちょっとこっちに来て」と私の肩を抱くようにして、玄関の前から、アパートと隣家の塀の間の大人ひとり分の幅しかない隙間に連れて行きました。

そこへ入り込んでしまうと外の通りからはもちろん、門から誰か入ってきても全く見えません。アパート側には隣室の窓がありましたが閉まっていて暗く、住人がいる気配はしませんでした。

 

こんなところで何をするのかと思っていると、男の人は私の前にしゃがみ込み、何か話しかけながら両手で私のズボンを下ろしました。

えっ?と思ううち、男の人の片手が私の下着の中に入ってきて、指先で股を何度も撫でられたのです。

 

えええ〜〜………!

 

…まずいことになったことを理解し、やめてほしいと思いましたが、ひたすら恥ずかしいのと、何かやましい雰囲気に呑まれたような、こちらがものを言ってはいけないような説明のつかない気持ちがして言葉が出ず、うつむきながら足を前後にして固く閉じました。

すると男の人から「もう少し足を開いて」と言われてしまい、えええ――っ!? 

どうしてもイヤでしたが、パンツに入れていない方の手で腰のあたりをつかまれていて逃げられる気がせず、渋々ちょっとだけ足を緩めました。

 

しばらくそうして私の股を触ったあと、男の人は私の下着から手を抜いて、ポケットから小さな紙包みを取り出しました。

手のひらの上で大事そうに包みを開くと、私の顔の前に差し出しながら言いました。

「これはね、気持ちよくなるお薬だよ」

それは白い粉末でした。

 

何の薬かはそのときも今も私にはわかりません。

でもこの白い粉を見せられた瞬間、頭の中でがんがん警報が鳴り出しました。

何か非常にやばいことになった、何としてでもここから逃げ出さなければならないと。

 

男の人は、その白い粉の匂いを嗅ぐようなしぐさをしてから指先につけ、また私の股を触りました。粉を私の性器にこすりつけるようにして触りながら、「もう少しだよ、もう少しで気持ちよくなってくるからね」と言うのです。

 

でも私はちっとも気持ちよくありません。それよりもどうやったらここから逃げ出せるか、がんがんする頭でそればかりを考えていました。膝はがくがく震えていました。

 

私の反応が鈍いと思ったのか彼は私から手を離し、再度粉を指にとりまた入れようとしました。

そこですかさず私は両手のひらを相手に向けて言いました。

 

「ちょっと待っててね。表に人がいないか見てくるから」

 

すると男の人は素直にうなずき手を下ろしたので、私はいかにも人目を気にするふうを装って静かに一歩ずつあとずさりながらその人から離れ、建物の隙間から出ても門までは抜き足差し足で行きました。

このときの数メートルが私にはもっとも恐ろしい時間でした。

 

逃げ出そうとしていることがバレて今にも飛びかかられるのではないかという恐怖と闘いながら、やっとのことで門までたどり着き恐る恐る振り返ると、彼は私を信用して大人しく待っているらしく、こちらを覗いてもいません。

 

そうして門の外まで体が完全に出たと同時に、後も見ずに脱兎の如く走って逃げました。

 

 

一目散に向かった先は自宅から200メートルほどのところにある交番。中にはお巡りさんが一人いて、机に向かって何か書いていました。

肩でぜいぜい息をしながら、これで助かった!と心底ほっとしたことを覚えています。

 

ところが、です。

交番に入って、たった今すごく恐ろしい目に遭ったことを言おうと思うのですが、足が動きません。

「家の前に変な人がいる」と言ったらその変な人にされたことも言わなくちゃならないんだよね……? 

そう思ったらなんだかものすごく恥ずかしくなってしまい、どうしても中に入れないのです。

 

家の近くにまだいるかもしれないあの人をなんとかしてほしいけど、お巡りさんに「あのこと」を面と向かって言えるだろうか……

 

もじもじしながら交番の前を何度も行ったり来たりした挙げ句、起きたことを正直に全部話せないのならお巡りさんにも助けを求めることはできない……

そう思ったら絶望的な気分になり、またお腹の底から恐怖が湧き上がってきました。

私が逃げたことにはすぐに気づいただろうから、私を探してこの道を追いかけて来るかもしれない、見つかっても交番には飛び込めないならここにいても危険だ――。

 

書類に没頭していて前でうろうろしている私に全く気づかない警官を、後ろ髪を引かれるような思いで振り返りつつ、心細さで泣きそうになりながらもそこを離れ、また走りに走って今度は駅向こうの丘の上の祖父母の家へ行きました。

しかし間の悪いことに留守。

滅多にないことに信じられない思いで呼び鈴を何度も押していたら、隣の顔見知りのおばちゃんが出てきてくれ、おばあちゃんたちはおつかいに行ってるみたいだからうちで待ってる? と親切に声をかけてくれました。

 

ヘトヘトで喉もカラカラだったし、いつもなら喜んで上がらせてもらうところでしたが、もし「今日はどうしたの?」とでも問いかけられたらやっぱり言えないと思い、遠慮してすごすごと祖父母の家をあとにしました。

 

日は暮れかけていてもう行くところもなく、こわごわ家に帰ることにしましたが、さすがにもういなくなっているだろうとは思ってもアパートの門が見えたときには足がすくみました。どこかから見られているような気もしたし、玄関の鍵を開けている間にさっきの隙間から出てきて襲われるんじゃないか、そんな恐怖を無理に払いのけて鍵を開け家に飛び込みました。

 

家ではちょうど母が勤め先から帰ってきたところだったようで、いるはずの私がいなくて訝しんでいました。

「こんな時間までどこに行っていたの」

 

…私は母に一部分嘘をつきました。

 

人さらいに連れて行かれそうになったがなんとか逃げて、交番へ行ったが警官はいなかったから祖父母の家へ行ったがそこも留守だったので帰ってきた、と。

 

いろいろ誘われたことは話せても、下着の中に手を入れられて触られたことはとても私の口からは言えませんでした。

恥ずかしいという以外にも、例えば私がぼうっと歩いていたから目をつけられたとか、痴漢されるような状況に陥ってしまったこと自体を私の落ち度として咎められるのでは…と本能的に感じたからだと思います。

 

結局この事件の真相は、半世紀近く経った今も母には話せていません。

 

 

これから判決を書くAさんの裁判官の皆さん。

私はあのとき、加害者から逃げ出すために、明確に自分の意思をもって、加害者に迎合するセリフを言い協力するようなそぶりを見せました。

しかし、私自身は断固として加害者の行為に同意はしていません。

すべて自分の身を守るためにやったことです。しかも誰にも教わらずにです。

年端もいかない子どもでさえ咄嗟にこのくらいのことを思いつくのですから、体力的にも心理的にも圧倒的に弱い立場の被害者が、自分を守るために加害者の機嫌をとって迎合するのは当たり前の人間心理ではないでしょうか。

 

また、親も学校の先生も、知らない人や怪しい人についていってはいけないということは繰り返し教育していましたが、痴漢されたときにどのように対処するべきかは一度も教わっていませんし、そういうことをされたあとの心のケアの仕方についても誰も知識がありませんでした。

だから、私は何も悪くないのになぜか後ろめたいような恥ずかしい気持ちになり、本当のことを言ったら怒られるような気がして言えなかったのだと思います。

 

そういう被害者の心理状態や行動様式に、年齢差はあまりないと思います。

 

2021年11月17日、長くつらい証人尋問にAさんは凛としてまっすぐに背筋をのばして臨み、最後まで顔を上げて証言しました。

私は今、あのとき子どもだった被害者として、Aさんの隣に並び立ちたいと思います。

 

 

被害者B(フリーライターAさんの裁判を支援する会・広報チーム)

 

 

withyou-nets.hatenablog.com

証人尋問傍聴記(第10回)最後まで向き合ったAさんに、何度でも拍手を送りたい

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 2021年11月17日、10回目の裁判期日を迎えたこの日、原告と被告の尋問が行われた。わずか7か月の間に何が起こったのか。Aさんと被告の証言をもとに、ライターの松本浩美さんが概略を描いた。

 

◆最後まで向き合ったAさんに、何度でも拍手を送りたい
 証言を聞いて、Aさんを支配下に置こうと、気まぐれにかわいがっては虐待する姿が何度も目に浮かんだ。
 Aさんは被告から離れられなかった理由を「アメとムチ」「洗脳状態」「キャリア」「成長」という言葉を使って説明した。
 Aさんは20代半ばで、まだ若い。しかも、会社に長年所属して実績を積んだわけではなく、経験が浅いままフリーランスになった。そこを見抜いた被告は、思うままに操ろうとしたのだろう。


 被告はエステサロンの経営者であり、美容の専門家という肩書を持つ権威である。その被告が、初対面のとき「ビジネスパートナーになってほしい」と言ってきた。これはライターとしての能力、あるいは可能性を見出していると解釈するだろう。少なくともAさんの警戒心は解かれるし、被告に対する印象は格段によくなる。
 そのため、被告から性体験について尋ねられ、多少の不信感は抱いたかもしれないが、いかにもプロらしい回答を聞いて、納得してしまったのではないか。しかも、Aさんにとって被告は重要なクライアントである。


 その後、被告は記事を絶賛したうえ、Aさんが自分のもとに足を運ばざるを得ない状況をつくっていく。例えば、6回の無料施術。本来記事を書くために受けたのは2回で、その後4回も施術を受ける必要はなかった。しかし、打ち合わせに行くと「次の日程は?」と尋ねられ、予約するように仕向けられる。
 業務委託契約の話をするとともに、美容のプロである自分から、今後活動するうえで大事な知識、情報を直接教わることができるなんて、めったにないことと言いくるめる。それを受けてAさんも、セクハラさえ我慢すれば自分の成長にとって必要な人と思い、離れることはしなかった。
 業務委託が始まってからは、1日の大半を被告とサロンの仕事に費やし、まさに専属となった。当面の収入だけでなく、もしかして自分の将来を左右するかもしれない被告である。仕事を始めたばかりの今、被告の機嫌を損ねてはいけないと考える、嫌なことがあっても我慢しなければと思うのが普通ではないか。 交互にやってくるアメとムチ。被告は報酬は払わないが、銀行口座を作るように指示したり、交通費として1万円渡したりする。こうしたところは、カルトの教祖をほうふつとさせる。信者を虐待する一方で、気まぐれに見せる優しさ。Aさんはからめとられそうになりながら、ボロボロにされながらも逃げた。

 

 そして、迎えた今日という日。勇気を振り絞って証言したのに、配慮のない尋問が多数浴びせられた。でも、泣きながらもきちんと答えた。被告の本人尋問のときも法廷内でずっと聞いていた。最後まで目をそらさず、事件と向き合った。何度でも拍手を送りたい。

 

裁判官へ。
 Aさんは、親の反対を押し切ってフリーランスになりたいと努力してきた。あなたたちも努力に努力を重ねて司法試験という難関を突破して、今その地位にいる。もし、法曹界に進みたくて、勉強の時間を確保するため、ギグワークあるいは個人事業主として働きながら受験勉強に励んでいる若い人がいたとする。その人が賃金未払いのうえセクハラ、パワハラを受けたとしたらどう思うか、考えてほしい。
 それから、ぜひフリーランスの実態を知ってほしい。月15万円が定期的な収入として保障される意味。そして、金額の多寡だけで仕事を選ばないということも。フリーランスにとって、自分の成長の可能性も大事な選択肢だということも知ったうえで判決文を書いてほしい。

松本浩美(出版ネッツ

 

証人尋問傍聴記(第1回)被告から「ビジネスパートナーになってほしい」と言われ - フリーライターAさんの裁判を支援する会

 

証人尋問傍聴記(第2回)セクハラを受ける〜専任のウェブ担当として業務委託契約へ - フリーライターAさんの裁判を支援する会

 

証人尋問傍聴記(第3回)1日8〜12時間ほぼ毎日記事を書く〜口座開設を指示され交通費1万円を渡される - フリーライターAさんの裁判を支援する会

 

証人尋問傍聴記(第4回)思い出したくないことを思い出している〜被害者が減ることを願って - フリーライターAさんの裁判を支援する会

 

証人尋問傍聴記(第5回)反対尋問「セクハラを受けたときの大声をここで再現してください」 - フリーライターAさんの裁判を支援する会

 

証人尋問傍聴記(第6回)補充尋問〜被害者を責めるような質問も - フリーライターAさんの裁判を支援する会

 

証人尋問傍聴記(第7回)遮蔽板を設置、姿を隠して証言〜誘導尋問に終始、Aさんの主張をすべて否定 - フリーライターAさんの裁判を支援する会

 

証人尋問傍聴記(第8回)被告の反対尋問、質問に答えず裁判長から何度も注意〜時に饒舌に - フリーライターAさんの裁判を支援する会

 

証人尋問傍聴記(第9回)怒涛の一日を振り返って - フリーライターAさんの裁判を支援する会

証人尋問傍聴記(第9回)怒涛の一日を振り返って

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 2021年11月17日、10回目の裁判期日を迎えたこの日、原告と被告の尋問が行われた。わずか7か月の間に何が起こったのか。Aさんと被告の証言をもとに、ライターの松本浩美さんが概略を描いた。

 

●集会……怒涛の一日を振り返って
 閉廷後、裁判所隣の弁護士会館で、Aさんと2人の代理人弁護士、支援者が集まり、集会を開いた。2人の弁護士は尋問を次のように振り返った。

 

〇長谷川弁護士
 本件は、Aさんが関わった期間は1年に満たないのに、たくさんの争点があり、複雑な事件。
 Aさんにとって思い出したくないことを思い出すのは、本当につらい作業だったと思う。でも、きちんと思い出して、言うべきことは全部きちんと話してもらった。また、思い出したくないことを話す、つらい気持ちも話してもらった。尋問が終わった後、Aさんは「涙腺が崩壊した」と言ったが、それぐらいストレスと緊張があったと思う。本当にお疲れさまでした。

 

〇青龍弁護士
 複雑な事件のため、原告と被告双方で55分の尋問時間を大幅に超えてしまった。被告の主張を裏付ける客観的な資料はほとんどない。被告の代理人は、本人にしゃべらせない方針で臨んだのだろう。反対尋問では矛盾することばかり証言した。事実認定でどこまで勝ち取れるか。引き続きご支援をお願いします。

 

 なお、両弁護士ともセクハラに関しては、「どのように認定するかはわからないが、具体的な場所やドアの状態について細かく尋ねていたので、Aさんが声を上げても聞こえない可能性がある、ということ自体は裁判官の頭に入ったのではないか」とのことであった。

 

 最後にAさんから挨拶があった。
 「今日もお忙しいなか、来ていただいてありがとうございます。尋問を通して、本当に弁護士の先生お二人に助けられて、すごいかっこよくて感動しました。皆さんの顔を見るだけで、ちょっと……。つらくても今日を迎えられたのは、本当に皆さんのお陰だなと。ありがとうございました」

 

 今後の予定は、来年(2022年)1月末までに最終準備書面を提出。2月16日に最終の口頭弁論、春ごろには判決が出る予定だ。

松本浩美(出版ネッツ

 

証人尋問傍聴記(第1回)被告から「ビジネスパートナーになってほしい」と言われ - フリーライターAさんの裁判を支援する会

 

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証人尋問傍聴記(第4回)思い出したくないことを思い出している〜被害者が減ることを願って - フリーライターAさんの裁判を支援する会

 

証人尋問傍聴記(第5回)反対尋問「セクハラを受けたときの大声をここで再現してください」 - フリーライターAさんの裁判を支援する会

 

証人尋問傍聴記(第7回)遮蔽板を設置、姿を隠して証言〜誘導尋問に終始、Aさんの主張をすべて否定 - フリーライターAさんの裁判を支援する会

 

証人尋問傍聴記(第8回)被告の反対尋問、質問に答えず裁判長から何度も注意〜時に饒舌に - フリーライターAさんの裁判を支援する会

証人尋問傍聴記(第8回)被告の反対尋問、質問に答えず裁判長から何度も注意〜時に饒舌に

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 2021年11月17日、10回目の裁判期日を迎えたこの日、原告と被告の尋問が行われた。わずか7か月の間に何が起こったのか。Aさんと被告の証言をもとに、ライターの松本浩美さんが概略を描いた。

 

〇質問に答えず、裁判長から何度も注意
 主尋問では素直に答えていた被告であったが、反対尋問になると様子が一変した。担当は青龍美和子弁護士だ。
 質問に対して質問で返して、まともに答えようとしない。例えば、「あなたは〇〇しましたね?」と問われると、「〇〇?(語尾が上がる)…え、〇〇?、〇〇ねえ、ブツブツブツブツ、〇〇って何ですか?」という感じではぐらかす。
 青龍弁護士は何度か「聞かれたことに答えてください」と注意したが、一向にやめようとしない。
 たまりかねた裁判長が「あなたは聞く立場ではなく答える立場です!」と一喝した。「聞かれたことだけを答えてください」という言い方はあるが、「立場」という言葉を使った注意を初めて聞いた。
 傍聴席からは何度も笑いが漏れ、裁判長から「静かにしてください」という注意も。それでも被告の態度は変わらず、以後裁判長から何度も注意を受けることになった。


 とはいえ、はぐらかすのも限界がある。焦ると言葉に詰まってくる。

青龍「あなたと原告とのLINEの送受信の記録があります。これを読むと、あなたは契約書を作成しようとしていましたよね?」。
被告「しようとしていた? え、しようとしていた? しようとしていた?」
青龍「はい、見せますね。(証拠提示)ここに報酬額が書かれていますよね」
被告「…記憶が薄いです…」

青龍「あなたは原告の能力を高く評価していましたよね?」
被告「高く? …普通に評価していました」
青龍「原稿がわかりやすい、と言いましたよね」
被告「普通に…定義が違います」

 反対尋問でも、原告に対してセクハラはしていないと否定したが、「施術中の写真は原告から頼まれて撮ったもの」「性的な話は原告の方から悩みとして相談された」と証言した。
 では、どんな状況で原告が悩みを相談したのか問うと「わからない」。さらに客に対して、性体験を訪ねることはあるのか問うと「ない」と答えた。ちなみにAさんは主尋問で、「被告は、客から性体験の話を聞くこともあると話した」と証言している。
 とはいえ、聞いていてとにかく訳がわからない(後から、ノートを見直してみても、意味不明な個所は多数あった)。そのうち本人も混乱してしまったのか、「今はどのトピックですか?」と弱々しい声で尋ねたこともあった。

 

〇「ウェブは重視していない」
 AさんはSEO対策をメインに、ウェブに関わる業務を行っていた。被告の主尋問での「記事が予約につながらないと言った」という証言を受けて、青龍弁護士が「予約がないということは、質が低いということか?」と問う。すると、「そんなことは言っていない」と否定した。
 ここまでの話は、ウェブは重要な集客ツールであることが前提である。しかし、そうではなかったらしい。「うちは完全予約。誰かの紹介が必要。一見の客は入れない」とも証言。青龍弁護士が「では、ウェブの記事を見て申し込んできた客は受け入れるのか?」と問うと「カウンセリングをしてから」と訳のわからない回答。
 裁判官による補充尋問でも矛盾だらけの証言は続いた。左陪席から、「Aさんが勝手に記事を毎日ホームページに挙げていたというが、あなたは知らなかったのか?」と問われると、「本人から報告がないのでわからなかった。うちではウェブは重要ではないので」とも答えている。

 

〇時に饒舌になる被告
 都合が悪いとはぐらかしたり、言葉に詰まったりするが、得意分野になると饒舌になるようだ。
 右陪席から「ケアという言葉の意味を教えてほしい」と問われると、「私の中ではケアはカウンセリングも含まれる。食事、美容、化粧品、ヘア、ファッションも。私はエステティックという言葉を、その人の人生、ライフスタイルという意味で使っています」。ほかにも聞かれもしないのに、サロンの経営について「借入ゼロ」「無借金経営」などと胸を張った。

 ここまでのやり取りを見て、Aさんが被告について「言葉巧みに」と表現した意味、そして、Aさんが報酬について話を切り出してもうやむやにされてしまった状況が理解できたような気がした。

 エステティックという言葉が「その人の人生、ライフスタイル」という意味であれば、この日の証言をどうとらえるのかを聞いてみたい。

 

 18時15分尋問終了。18時30分閉廷。当初の予定を1時間半過ぎていた。傍聴者にもさすがに疲労の色がにじみ出ていた。

松本浩美(出版ネッツ

 

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