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証人尋問傍聴記(第4回)思い出したくないことを思い出している〜被害者が減ることを願って

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 11月17日、10回目の裁判期日を迎えたこの日、原告と被告の尋問が行われた。わずか7か月の間に何が起こったのか。Aさんと被告の証言をもとに、ライターの松本浩美さんが概略を描いた。

 

〇「思い出したくないことを思い出している」
 セクハラについては、具体的な行為の詳細はもちろん、サロンの間取り図を用いて、どの部屋にどのようにいたのか、ドアは開いていたのか、閉まっていたのか、他に客がいたかいなかったなども問われた。Aさんはその都度、言葉はつっかえながらもしっかりと証言した。とはいえ、答えられなくなった場面もあった。

長谷川弁護士「大丈夫ですか?」
Aさん「……(泣)」
長谷川「今、涙が出ているのはどんな気持ちからですか?」
Aさん「……(泣)…悔しいというか…思い出したくないことを思い出している感じがします」
長谷川弁護士「落ち着いてからでいいですよ」
Aさん「大丈夫です」
 そう答えると、Aさんはしばらく涙声で証言を続けた。傍聴席からもすすり泣く声が聞こえた。

 

〇「カバン持ちになるか、やめるか選べ」
 10月に入ると、Aさんの体調が悪化した。体が震え、睡眠障害が現れるようになった。頭痛、鼻血など自律神経の乱れと思われる症状にも悩まされるようになった。
 それでも、被告から指示された通り仕事をこなした。報酬について問い合わせても、被告ははぐらかすだけだった。
 ついに、無償であれば働けないと被告に告げると、被告は「カバン持ちになるか、やめるか選べ」と言い放った。
 10月21日、契約終了。Aさんは被告の仕事をやめた。

 その後、Aさんは報酬未払いについて東京都労働情報センターに相談。そこから出版ネッツへとつながった。
 心身の状態が悪化していたものの、医療機関を受診したのは、出版ネッツへの相談から3か月近く経った2020年1月半ばであった。なぜすぐに病院へ行かなかったのか。「3か月無償で働いていたのでお金がなく、外出する気力もありませんでした」と証言した。

 

〇被害者が減ることを願って
 最後にAさんは、裁判所へ次のように訴えた。
 「裁判にすることで嫌なことを思い出すので、迷いがありました。それでも裁判すると決めたのは、これからフリーランスとして働く人が、私みたいな目に遭わないでほしい、同じような被害者が少しでも減るようになればいいと思いました。私の気持ちとしては、被告に反省してほしいとかではなく、今後のフリーランスのために、公正な判決をお願いします」。
 被告に対して謝罪も反省も求めない。(その時点では)法廷にいない被告に聞かせたい言葉であった。

松本浩美(出版ネッツ

 

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