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証人尋問傍聴記(第8回)被告の反対尋問、質問に答えず裁判長から何度も注意〜時に饒舌に

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 2021年11月17日、10回目の裁判期日を迎えたこの日、原告と被告の尋問が行われた。わずか7か月の間に何が起こったのか。Aさんと被告の証言をもとに、ライターの松本浩美さんが概略を描いた。

 

〇質問に答えず、裁判長から何度も注意
 主尋問では素直に答えていた被告であったが、反対尋問になると様子が一変した。担当は青龍美和子弁護士だ。
 質問に対して質問で返して、まともに答えようとしない。例えば、「あなたは〇〇しましたね?」と問われると、「〇〇?(語尾が上がる)…え、〇〇?、〇〇ねえ、ブツブツブツブツ、〇〇って何ですか?」という感じではぐらかす。
 青龍弁護士は何度か「聞かれたことに答えてください」と注意したが、一向にやめようとしない。
 たまりかねた裁判長が「あなたは聞く立場ではなく答える立場です!」と一喝した。「聞かれたことだけを答えてください」という言い方はあるが、「立場」という言葉を使った注意を初めて聞いた。
 傍聴席からは何度も笑いが漏れ、裁判長から「静かにしてください」という注意も。それでも被告の態度は変わらず、以後裁判長から何度も注意を受けることになった。


 とはいえ、はぐらかすのも限界がある。焦ると言葉に詰まってくる。

青龍「あなたと原告とのLINEの送受信の記録があります。これを読むと、あなたは契約書を作成しようとしていましたよね?」。
被告「しようとしていた? え、しようとしていた? しようとしていた?」
青龍「はい、見せますね。(証拠提示)ここに報酬額が書かれていますよね」
被告「…記憶が薄いです…」

青龍「あなたは原告の能力を高く評価していましたよね?」
被告「高く? …普通に評価していました」
青龍「原稿がわかりやすい、と言いましたよね」
被告「普通に…定義が違います」

 反対尋問でも、原告に対してセクハラはしていないと否定したが、「施術中の写真は原告から頼まれて撮ったもの」「性的な話は原告の方から悩みとして相談された」と証言した。
 では、どんな状況で原告が悩みを相談したのか問うと「わからない」。さらに客に対して、性体験を訪ねることはあるのか問うと「ない」と答えた。ちなみにAさんは主尋問で、「被告は、客から性体験の話を聞くこともあると話した」と証言している。
 とはいえ、聞いていてとにかく訳がわからない(後から、ノートを見直してみても、意味不明な個所は多数あった)。そのうち本人も混乱してしまったのか、「今はどのトピックですか?」と弱々しい声で尋ねたこともあった。

 

〇「ウェブは重視していない」
 AさんはSEO対策をメインに、ウェブに関わる業務を行っていた。被告の主尋問での「記事が予約につながらないと言った」という証言を受けて、青龍弁護士が「予約がないということは、質が低いということか?」と問う。すると、「そんなことは言っていない」と否定した。
 ここまでの話は、ウェブは重要な集客ツールであることが前提である。しかし、そうではなかったらしい。「うちは完全予約。誰かの紹介が必要。一見の客は入れない」とも証言。青龍弁護士が「では、ウェブの記事を見て申し込んできた客は受け入れるのか?」と問うと「カウンセリングをしてから」と訳のわからない回答。
 裁判官による補充尋問でも矛盾だらけの証言は続いた。左陪席から、「Aさんが勝手に記事を毎日ホームページに挙げていたというが、あなたは知らなかったのか?」と問われると、「本人から報告がないのでわからなかった。うちではウェブは重要ではないので」とも答えている。

 

〇時に饒舌になる被告
 都合が悪いとはぐらかしたり、言葉に詰まったりするが、得意分野になると饒舌になるようだ。
 右陪席から「ケアという言葉の意味を教えてほしい」と問われると、「私の中ではケアはカウンセリングも含まれる。食事、美容、化粧品、ヘア、ファッションも。私はエステティックという言葉を、その人の人生、ライフスタイルという意味で使っています」。ほかにも聞かれもしないのに、サロンの経営について「借入ゼロ」「無借金経営」などと胸を張った。

 ここまでのやり取りを見て、Aさんが被告について「言葉巧みに」と表現した意味、そして、Aさんが報酬について話を切り出してもうやむやにされてしまった状況が理解できたような気がした。

 エステティックという言葉が「その人の人生、ライフスタイル」という意味であれば、この日の証言をどうとらえるのかを聞いてみたい。

 

 18時15分尋問終了。18時30分閉廷。当初の予定を1時間半過ぎていた。傍聴者にもさすがに疲労の色がにじみ出ていた。

松本浩美(出版ネッツ

 

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