証人尋問傍聴記(第7回)遮蔽板を設置、姿を隠して証言〜誘導尋問に終始、Aさんの主張をすべて否定
2021年11月17日、10回目の裁判期日を迎えたこの日、原告と被告の尋問が行われた。わずか7か月の間に何が起こったのか。Aさんと被告の証言をもとに、ライターの松本浩美さんが概略を描いた。
〇遮蔽板を設置。姿を隠して証言
20分の休憩を経て、16時5分再開、被告の本人尋問である。
入廷するとすでに遮蔽板が設置され、その中に被告はいた。遮蔽板で囲われているため、傍聴席からも原告席にいるAさんからも被告の姿は見えない。
被告は自分の姿をさらしたくないと、遮蔽板の設置を要求したという。弁護団は異議を出したが、「傍聴人がたくさんいると尋問に影響するから」という被告の要求が認められ、このような形での証言となった。
長谷川弁護士によれば、事件の被害者が遮蔽板の設置を要求することはあっても、加害者がそうすることはないという。それだけでも異例なのだ。
〇誘導尋問に終始。Aさんの主張をすべて否定
最初に経歴を確認する。被告はIT業界を経て、2013年にエステサロンをオープン。業界での国際的な資格も取得し、美容専門の大学院でも学んだ専門家であることをアピールした。
本題に入る。代理人弁護士は、原告が主張する被害事実、被告の行為について述べ、「はい」「いいえ」で答えさせた。「あなたは原告に対して●●しましたか?」というふうに。当然、被告はAさんの主張をすべて否定した。
これについては長谷川弁護士が「誘導尋問です!」と異議を出した。しかし、改めることはなくずっと続いた。ちなみに長谷川弁護士によれば、誘導尋問による証言は証拠価値は低いという。
マスクをしているせいか、ぼそぼそした声で、ところどころ聞き取れないところがあった。
ほとんどが「はい」か「いいえ」という答えであったが、いくつかは自分の言葉で反論した。「質の低い記事などとは言っていない。記事が予約につながらない、と言ったことがある」、1万円を渡した理由について「お金がないと何度も言っていたので、かわいそうに思い1万円渡した」など。
最後に原告に対して言いたいことはないか質問されると「特にないです」と一言。陳述書の内容に間違いはないことを確認して、主尋問は終了した。ちなみに、被告の主張を裏付ける客観的な証拠は提出されていない。
原告の主張をことごとく否定する割には、原告に対しても裁判所に対しても何も言わなかった。また、提訴による影響についても代理人は質問しなかった。
では、Aさんの反対尋問での「被告の実名を出したのはあなたの提案か?」という質問に何の意味があったのか。その質問からすれば、「訴えられたうえ、記者会見で実名を出されたから、業務に支障をきたし、社会的地位も低下した」という抗議に聞こえたのだが、それなら主尋問で堂々と訴えればいいのに。
松本浩美(出版ネッツ)
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