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証人尋問傍聴記(第6回)補充尋問〜被害者を責めるような質問も

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 2021年11月17日、10回目の裁判期日を迎えたこの日、原告と被告の尋問が行われた。わずか7か月の間に何が起こったのか。Aさんと被告の証言をもとに、ライターの松本浩美さんが概略を描いた。

 

●補充尋問〜被害者を責めるような質問も
 尋問も終盤、裁判官による補充尋問を残すだけとなった。最初に、左陪席(織田みのり裁判官)が事実について細かく尋ねる。すでに答えている内容について、さらに詳しい説明が求められるのだ。セクハラを受けた場所、客がいたか、ドアやカーテンは閉まっていたかなどなど、Aさんは記憶にある限り答えた。しかし、嫌な記憶を呼び起こして言葉にするのは相当に苦痛を伴う作業だ。再び沈黙し、涙声で証言する場面も見られた。
 右陪席(熊谷浩明裁判官)からは、被告の仕事を辞めた後、生活に困窮していたのに親に相談できなかった、言えなかったのはなぜかとの質問がなされた。

Aさん「親からは、フリーランスになることを反対されていました。こんなことになったと話すと、責められるのではないかと思い、話せませんでした」。
左陪席「でも、あなたは悪くないのですよね? そんなことは言わないのではないですか?」
Aさん「当時は、そう(責められると)思っていました」。

 聞いていて、怒りを覚えた。「親に話せないのは、あなたにやましいところがあるからだ」、「女性なのだから、生活が苦しければ家族に頼ればいい」、「フリーランスなんてリスクが高いのだから、最初から目指したあなたが悪い」。そのように言っているように感じたからだ。被害者を責めてどうするつもりなのだ。それに、Aさんが男性だったら、熊谷裁判官はこのような質問をしたのだろうか? 

 最後に平城恭子裁判長は、被告の仕事を受けるまでの職歴、得ていた収入額について質問した。業務委託の報酬15万円がAさんにとってどのくらいの意味を持つのか、具体的な数字と比較して確認しようとしたのだろう。

 

〇やめてから「思い出さないようにしてきた」
 補充尋問を聞いて、裁判官に業務委託の内容が理解されていないと感じた長谷川弁護士は、再び、契約締結前から何度も話が出ていたこと、具体的な数字までLINEで送られてきたことなどを再度丁寧に確認する。
 さらに、Aさんの「記憶があいまい」となっている部分について、なぜそのような状態になったのか、仕事を辞めて以後の精神状態について尋ねた。
 「被告から、かばん持ちになるかやめるか選べといわれ、自分のされたことがわかりました。それからは1か月間、(されたことを)思い出していました。しかし、1か月過ぎたら、思い出さなくなりました。忘れたいと思っていたし、思い出さないようにしていました」。
 ネッツに相談して説明したときは、「きちんと話せる精神状態かわからなかったので、(被害の詳細を)忘れないように紙に書いておいて、それをもとに相談しました」。

 

 15時45分、予定時刻を1時間以上オーバーして尋問は終了した。緊張とともにAさんを見守っていた傍聴席からも、ホッとした空気が流れた。

松本浩美(出版ネッツ

 

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