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証人尋問傍聴記(第5回)反対尋問「セクハラを受けたときの大声をここで再現してください」

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 2021年11月17日、10回目の裁判期日を迎えたこの日、原告と被告の尋問が行われた。わずか7か月の間に何が起こったのか。Aさんと被告の証言をもとに、ライターの松本浩美さんが概略を描いた。

 

●反対尋問〜「セクハラを受けたときの大声をここで再現してください」

 被告代理人弁護士(男性)による反対尋問では、Aさんが提出した陳述書、証拠(メール、LINE)、証言との食い違いについて質問がなされた。細かな相違を尋ねられて、戸惑うAさん。証言の信ぴょう性を揺るがせるのが狙いなのだろう。
 被告代理人が尋ねる。「体験記事の報酬がうやむやにされてしまったと言いますが、被告から『施術の代わりに報酬はなしで』というメッセージを受けた記憶はありませんか?」。メッセージはAさんが証拠として提出したものだ。覚えていないのはおかしい、というわけだ。Aさんは「嫌な記憶であいまいですが、こういう話があったことを覚えています」と答えた。
 続けて、被告代理人は「施術は本来有料ではなかったのか」と質問。「お金を払うのなら、受けませんでした」とAさん。


 さらに続く。「セクハラを受けたとき大声を上げたそうですが、今ここで再現できますか?」。これは前振りだ。本題は「この日はサロンに客がいたのだから、大声を聞いて誰かやってきたのではないですか?」。Aさんは「いいえ」と否定した。
 月19万円の収入があったのに、月15万円の報酬しか出さない被告は大事なクライアントなのか? という質問もあった。Aさんは「被告は言葉巧みに、信頼関係を築いてきました。性的に不快なことをしたり、被告に悪いところはあっても、良心はあると思っていました」と答えた。


 その他、Aさんが被告に迎合するかのように読めるメッセージをなぜ送ったのか、追及した。例えばAさんは、記事を酷評する被告に対して「わがままを承知で言うと、私の気持ちとしてはもう1か月見ていただきたいです」というLINEメッセージを送っている(8月31日送信)。「今となってはおかしいが、被告の機嫌を取ろうとした」、「なぜ、こんな言葉(わがままを承知で)を使ったのかわからない」とAさん。


 質問は、提訴の記者会見にまで及んだ。会見時に被告の実名を明かしたのは、Aさんの提案ではないか、というのだ。本筋とはまるで関係ない、しかも言いがかりとしか思えない質問に、青龍美和子弁護士が異議を唱えた。
 しかし、その後も被告代理人は「皆さんのために頑張る、とあるが皆さんとは誰か?」(出版ネッツ組合員へのメールの中のAさんの言葉)などと、出版ネッツにそそのかされて提訴したのではないか、と印象付けるような質問を投げかけた。これに対してAさんは泣きながら、「(私を)温かく支えてくれた人たち。その気持ちに応えたい」と感謝の言葉を述べた。


 ちなみに、この弁護士は証拠を提示したときに、Aさんの実名を読み上げてしまった。主尋問でも伏せていた名前を、相手方の代理人が明かしてしまう。Aさんに対する配慮のなさを感じた一瞬であった。

 なお、反対尋問後、長谷川弁護士が再びAさんに、月15万円の被告の仕事がAさんにとってどれほど価値があったのか確認した。それまでの収入には満たないものの、Aさんにとって初めての大きな仕事であったこと、ライターとして実績を積むチャンスと感じたことを証言した。

松本浩美(出版ネッツ

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