フリーライターAさんの裁判を支援する会

すべてのハラスメントにNO!性暴力と嫌がらせ、報酬不払いを許さない! 勇気をもって声をあげたAさんの裁判を支援する会です。出版ネッツのメンバーが運営しています。

職場の常識を変えたい―セクハラ裁判第1号の支援者からAさんへ

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 この裁判を知ったとき、セクハラ事件が当たり前のように起き続けている現実に、怒りが湧いてきました。32年前もそう、怒りが行動につながるエネルギー源でした。

 

 1989年8月5日、日本初と言われるセクハラ裁判が福岡で提訴されました。「セクシュアルハラスメント」という言葉も概念も知られていない頃です。結成された支援の会も「職場での性的いやがらせと闘う裁判を支援する会」と名付けられました。私はその事務局の一員でした。

 

 当時、女性運動に携わっている人からでさえ「こんなことで裁判を起こすなんて、地道に積み上げてきた運動が10年後退する」と批判を受けました。しかし実際には、我慢して口には出さなかったけれど「苦しい出来事」「あの気持ち悪さ」を抱えている女性は多く、勇気をもって裁判を起こした原告を心から支援すると300人を超える声が全国から寄せられました。憲法で保障された「幸福追求権」「法の下の平等」「生存権」「労働権」など基本的人権を奪うものであるとの訴えが届き、加害上司だけでなく退職を強要した会社の責任も認めた勝訴判決を得ました。

 

 この裁判記録を「職場の常識は変わる」と題した本にしてから30年。メンバーは、それぞれセクハラ・DV等の性暴力、労働差別などをテーマに活動を続けてきましたが、残念ながら職場の「常識」はあまり変わっていません。私たち世代の力不足で、申し訳なく思います。

 セクハラの認知度は上がりましたが、モラルやマナーのように言われ、基本的人権の問題としての認識が希薄になってきたように感じます。人格を貶め、生きる気力を失わせ、生きる糧である仕事をも奪う、それがセクハラです。

 

 原告のAさんには、心無い言葉や過度な期待が聞こえてくることもあり、気持ちが揺れ動く日もあるでしょう。けれども、Aさんの訴えは至極当然です。私はカンパ行動しかできませんが、原告のAさん、支援の会の皆さん、心から応援しております。

(福岡市在住 三好久美子)

 

 

(注)福岡セクシュアル・ハラスメント裁判とは

1989年8月に提訴された日本初のセクシュアル・ハラスメント裁判。セクハラという言葉もない時代、「職場での性的いやがらせと闘う裁判」として世間の注目を集めた。被害女性は職場の上司から執拗な性的中傷を受け、退職を強要され、取引先などにも同様の中傷をばらまかれた。2年半の会社でのいやがらせ、提訴までの1年3カ月、提訴から判決まで、計6年を費やし、92年4月に原告の全面勝訴となった。

(職場での性的いやがらせと闘う裁判を支援する会『職場の「常識」が変わる――福岡セクシュアル・ハラスメント裁判』インパクト出版会、1992年、より)

 裁判中に同会が発行していたニュース「NO!セクシュアル・ハラスメント」1~19号はNPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)のミニコミ図書館にアップされている。 

wan.or.jp